チビ・ゆきのルイージの小説外伝

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ルイージの小説外伝 2.5 穢れた世界の収束と再生編 第十五話

ルイージの小説外伝 2.5 第十五話

 

黒い魔女が聖なる矢に貫かれると、魔女は聖なる光に包まれてしまった。その光は白く、真っ白に輝き城全体を包み込んだ。目も開けてられないほどの光に包まれた僕らは、目を閉じて光が止むのをジッと待つ。

暫くして光が収まり皆で目を開くと、そこには魔女を必死で抱きとめて、気を失っているディメーンが居た。僕らが駆け寄ろうとするとディメーンの体がピクリと動き、時期に目を開けた。ディメーンが未だ気を失っている魔女を揺さぶると魔女は目も口も開かず、ただディメーンの腕の中で死んだように眠っている。僕が声をかけようとすると、ふと天使がしっと口に手を当てた。

「あ」

口に手を当てたやいなや、近くにいたシロスケが一声をあげた。その時だ、魔女がゆっくりと起き上がった。目をぱちくりとさせ、こちら側とディメーンを見てきょとんとする。生きていた、優しい彼女は。生き残ったのだ。悪しき心は消え去り、優しい彼女だけが残ったのだ。その事を理解したのだろう。ディメーンはくしゃりと顔を歪ませると、思いっきり彼女を抱きしめた。

「終わった、な」

それを見た瞬間、僕の兄さんがそう呟く。
皆がこの長い戦いに終止符が付いたのだということを理解すると同時に、賑やかなランとシルク、天使が勝利の叫びを上げる。続いてスピネルやもう一人の僕も涙を浮かべ歓喜した。シロスケも安堵しているのか、見たことのないホッとした表情を浮かべている。
終わったのだ、僕と兄さんにとってはよくある事件が。彼らにとっては最大の事件が。
ディメーンにとっては、人生を掛けた事件が。
終わったのだ。
僕は銃を下ろし座る。そろそろ体力の限界だったからだ。横からのセキリュウの大丈夫か?という呼び掛けに頷き、僕は必死に彼女を抱きしめるディメーンを見つめる。
あんなディメーンは初めて見る。いつもはふざけて僕に執拗に構ってくるアイツ。

「少し、嫉妬か?」

「まさか」

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兄さんからの問いかけに、僕は笑って答えた。
嫉妬じゃない、きっとこれは、安堵しているだけだ。別に、アイツのこと好きなわけじゃないし、寧ろ苦手だし…。
そんな事を考えて複雑な表情を浮かべるとからかうように兄さんが笑った、後で覚えててよね…。


暫くしてディメーンが彼女を連れてこちらに来た。曰く彼女には悪しき心を持った時からの記憶がなく、今何故ここに居るのかも今まで何をしていたのかも分からないらしい。
そんな彼女に、兄さんは気にしなくていいよと答えていた。彼女は、兄さんや僕が二人居ることについて困惑はしながらも頷いた。
僕は兄さんの方を見る。兄さんも視線に気がついたのか、こちらを見て微笑みかけてくれた。
事件は終わった。終わった…のだけど……。

「どうしたの?ルイージ

少し暗い顔になっていたのか、スピネルが心配をして僕に声を掛けてくる。
大丈夫だよ。と答えると、少し不満そうにそう。と悲しげに返事をした。どうやらバレバレらしい。

「心中お察しするよ」

見かねた天使が声を掛けてきた。

「兄さんは、天国に帰らないといけないんですよね」

そう告げる僕に、彼女はそっと頷く。幾ら天使、創造神とはいえ、自然の摂理というものを曲げるわけにはいかないらしい。
会話を聞いていた兄さんは少し悲しそうな顔をするが、すぐに微笑んだ。

「大丈夫だよ。きっと僕ら、また巡り会えるさ。だから、今は…しばらくのお別れだ」

兄さんの言葉に、僕も微笑み返す。

「うん、またいつか」

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会おう、兄さん。

 


「さぁーて、この世界を元に戻して、帰す奴は帰さんとねぇ……」

天使が伸びをしてそう切り出す。
向こうの世界のメンバーはそれぞれ向こうに帰るのだろう。
多分、もう会うことは無い。

「シルク…帰っちゃうの?」

「スピネル…」

悲しげに言うスピネルに、苦虫を噛んだような表情を浮かべるシルク。シルクだって恐らく、ここに居たいはずだ。だが…

「向こうには、セルヴィさんたちが待っているんじゃないのか?」

「それもそーなんだけどさぁ……」

スピネルとは一緒に居たい、だが向こうには帰りを待つ人がいる。葛藤していた。
天使はその様子を見ながら、僕の肩をちょんちょんと叩く。

「どうされました?」

「あんさ、シルクの家って…多分残ってるよね?」

「恐らく…ですが」

シルクのお屋敷か…確かまだ残っていたはずだ。あのあと何も手はつけられていないし正直誰かが安易に近付けるような所に立ってもいない。

「なら、大丈夫!!」

そう言って天使はシルクとスピネルの肩を抱く。二人がきょとんとしていると天使は満面の笑みで微笑んだ。

「シルクはここに残んな。ギルドの特殊部隊の件とセルヴィには言っておくからさ」

「は?ちょ、待ってよ。それ尻拭いするの僕じゃん」

天使の思いがけないセリフにもう一人の僕が抗議の声を上げる。そんな彼の様子を見て天使は大げさにため息をついた。

「ないわー。実に無いっすわルイージパイセーン」

「おい、その言い方ウザイからやめろ撃つぞ」

「イイじゃんそんぐらい。やぁーっと再会出来たんよぉ?大目に見てあげなよ☆」

「…………わぁったよ」

彼は少し面倒くさそうにしながらも了解の声を上げた。ぶつくさとなんで僕が…仕事が増える…だの言っているが、本心なのだろうか照れ隠しなのだろうか…。

「そっか…じゃあ私、もう一度猫の手の試験受けないとね?」

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僕がもう一人の僕に気を取られていると、シルクが僕の方を見てニンマリと笑った。
なるほど、またあの爆裂ハンマーを受けないといけないわけだ。でもまぁ、そんな取得の無い日常が戻るのであればそのぐらい…。

「さ、皆!全部元に戻すよ!この事件を覚えているのはおそらく今この場にいる僕らだけだ。話はちゃんと合わせるように!いいね?」

天使が僕らの方を見る。僕らはほぼ同時に頷き、天使がよしよしと微笑んだ。

「じゃ………この穢れた世界に、収束と再生を…!!」

僕らも、世界さえも神秘の光に包まれる。


目が覚めたその時には、また平和な未来が待っているのだろう。

 

 

 

もし、また事件があっても大丈夫だろう。

もう迷ったりしない。

居ないものに頼ったりもしない。

だって、

 

 

 

「皆がいるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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-END-

ルイージの小説外伝 2.5 穢れた世界の収束と再生編 第十四話

  ルイージの小説外伝 2.5 第十四話

 

ディメーンの足元に白い光で魔法陣が描かれる。美しくも儚い花の模様で描かれたそれは、光を放出しディメーンを包み込んだ。黒い魔女は目を見開くとこのまま消されてたまるものかと黒い光の魔法陣を足元に描き、漆黒の光に包まれる。

「一体何が…!」

冷や汗を垂らしながらもう一人の僕が緊迫した表情で彼等を見つめる。そうこうしてるうちに両者の光が弾け飛び、ディメーンは聖なる弓矢を構え、黒い魔女は何枚もの黒い結界を自分の前に出現させた。

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「………綺麗だ」

ボソリと、シルクが呟いた。ディメーンの持つ光の弓矢は白き光を放ち黒い魔女を威圧する。黒い魔女は目を細めまたもや棘を繰り出そうと地面に手をおこうとする。
すかさずディメーンが弓をゆっくりと最大まで引き、放った。


ディメーンが矢を放つと、矢は結界に阻まれる。だが、光の矢は漆黒の結界にヒビを入れ1枚ずつ割っていく。
一枚、また一枚と、皆が固唾を飲んで見守る中、矢は結界を貫いていく。

「最後の1枚……!」

スピネルがそういうとディメーンが魔女に向かって走り出した。魔女は光と闇の攻防に阻まれて見えないのだろう、矢を抑えるのに必死のようだった。ディメーンは魔女の目の前の矢まで走ると矢に向かってジャンプする。
一体何を…!!

「……!行っけぇぇぇぇ!!」

ディメーンが何をしようとしてるか気が付いたのだろう、シルクがそう叫んだ。
あぁそうか、なるほど。
僕が納得した瞬間、彼は思った通りの行動をした。ジャンプして飛び上がったディメーンは、矢に思いっきり蹴りを入れる。

そして……、最後の1枚が割れた。

 

 

 

 

 

 

やっと私を解放してくれるのね。

やっと君を解放できるよ。

何処の誰かも思い出せない貴方。

優しいオレの大切な幼馴染みの君。

きっと私は貴方を知っているし、

きっと君はオレを忘れているし、

貴方も私を知っているのでしょう。

それでも君はオレを信じているのだろう。

あぁ、もう本当の姿も、

あぁ、もうあの笑顔も、

何もかもが思い出せない。

何もかもを忘れてしまいそう。

私を呼ぶ柔らかなあの声も

オレを呼ぶ優しげな声も

もう忘れてしまったの。

もう忘れてしまいそうだ。

もう何も聞こえないのよ。

もう何も聞こえないのだろう。

お願い、この夜が明ける前に。

あぁ、この夜が明ける前に。

 

 

わたしに、とわなる…ねむりを……。

きみに、とわなる……ねむりを…!!

 

 

 

 


黒い魔女を、聖なる矢が貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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私の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。

ルイージの小説外伝 2.5 穢れた世界の収束と再生編 第十三話

 ルイージの小説外伝 2.5 第十三話

 

ディメーンと魔女が激しい攻防を繰り広げるさなか、もう一人のルイージがもう一人のマリオを連れてきた。入口の外に置きさられてからずっ放置状態で眠っていたらしく、もう一人のマリオさんは眠そう。様子を見る限り怪我はなさそうだ、私はホッと息をつく。

「おかえりなさい」

そう告げた私に、彼は悲しげな微笑みを返した。
凄く悲しげな微笑みにどうしてそんな顔をするのかと疑問を覚えていると、もう一人のマリオはマリオに向かって頭を下げた。びっくりしたのかマリオは慌てて顔を上げてと言う。一体どうしたのだろうか。

「やめて下さい。きっと、貴方のせいではないから」

そういうマリオにもう一人のマリオは優しく微笑みかけた。私には分からなかったが、シルクはハッとした顔をして天使を見た。天使は苦笑いをして頷きもう一人のマリオに頷く。もう一人のマリオはそれを見て、そうかと微笑んだ。

一体全体なんの話なんだろう。ルイージも分からないようで、もう一人のルイージと目を合わせては苦笑されている。
その瞬間、真後ろで大きな音が響いた。
後ろを振り向くとディメーンが黒魔女の首根っこを押さえつけていた。状況は優勢らしい。
皆が安堵した途端ディメーンの周りに黒い手が無数に生えてくる。状況を判断したもう一人のルイージが、すかさず銃を構え黒い手を撃ち抜いた。
黒魔女が舌打ちした瞬間ディメーンが首から手を離し後ろに下がる。よく見ると..先程までディメーンがいた所に数本の棘が生えていた。後ろに下がっていなければ今頃串刺しだったのだろう。

「っ……」

「ふん…もう終わりか?道化師よ」

舌打ちをするディメーンに黒魔女が笑いかけた。万事休すか。そう誰もが思った次の瞬間、彼女が口を開いた。

「メディ、もう終わりにしよう」

その声にディメーンがこちらを向いて目を見開いた。大して口を開いた天使は悲しげな表情で続ける。

「もう、決心はついてるんだろ?」

その言葉にディメーンが固まる。何故だろう、とても、とても言葉には言い表せないようななんとも言えない顔を浮かべている。

「もう、終わりだ、終わりにしよう」

もう一人のマリオとルイージもそれぞれディメーンから顔を背けては黒魔女を睨んでいる。

「その聖なる力で、彼女ごと消し去れ」

冷たい口調で、彼女はそう告げた。

 

 

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「分かってるよ、そんなの」

皆に聞こえない声で、オレは呟く。あぁ、分かってるよ、分かってるんだ。でも、出来ない。天使が言うには勿論、聖なる魔法で邪悪な心だけが消える可能性は大いにある。

だが、彼女の心ごと消えないとは限らない。

でもそうするしかないのは分かってるんだ、分かってる。まだ時間が欲しかった。
もう一度、彼女と笑い合いたかった。けどもう、無理なのだろう。ならば、それならばせめて……………。

 

「妖艶なる黒魔女に、永久なる眠りを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


呟いた、彼がそう呟いた。
彼の地面に敷かれる光り輝く魔法陣。
やっと私を解放してくれるのね。
何処の誰かも思い出せない貴方。
きっと私は貴方を知っているし、
貴方も私を知っているのでしょう。
あぁ、もう本当の姿も、
何もかもが思い出せない。
私を呼ぶ柔らかなあの声も
もう忘れてしまったの。
もう何も聞こえないのよ。
お願い、この夜が明ける前に。


わたしに、とわなる…ねむりを……。

ルイージの小説外伝 2.5 穢れた世界の収束と再生編 第十二話

ルイージの小説外伝2.5 第十二話


「どういうこと?」

ディメーンの野郎が攻撃を仕掛け、魔女がそれに応じた頃。私は魔力を増幅させるのをやめた天使に疑問を投げかけた。
返ってきた言葉はいやに簡単で、

「いやね、任せましょうや。あの救世主様に」

いや救世主って誰だよと。

「まぁまぁ疑問は分かるよぉ?ランにシルク。でもね、いーのいーの。僕がやることじゃあないんだよこれは」

ケラケラと笑う天使。どうやら何か策があるのだろうということはわかるけれど。

「というか…救世主ってだぁれ?」

ランがコテンと傾げた。ルイージもスピネルを保護し連れてきて同じく疑問の顔を浮かべた。天使は苦笑いするととんでもないことを告げた。

「誰って決まっているじゃない。純白に輝く魔法も、漆黒に輝く魔法も、どちらも容易く扱うことが出来る大魔法使い。とどのつまりディメーン……いや、メディ=ルーンさ」

 

 


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メディ=ルーン。


ルーン家、聞いたことがある。
地下世界アンダーグラウンドにある世界有数の代々続く有名な魔法使いの家柄なんだって…。
あぁ多分、ディメーン本人から聞いたんだ。
忌々しそうに言っていたもの。
代々黒魔術に優れているらしくって、でも白魔術は全くといっていいほど扱えないんだって。
まぁ、僕には関係ないんだけどって。
その話をする時、凄く怒ったようだったから僕はそれ以上聞くのをやめて皿洗いに専念した。

そっか、そりゃ嫌だよね。
自分を迫害した家族の話なんて。
なんだ、僕よりも酷いめに合ってるんじゃない。
気を使ってくれなくても良かったのにサ。
まぁそれが、彼なりの接し方なんだろうけど。
もう少しサ、頼ってくれてもいいじゃんねぇ?ウシャシャシャ!
それにしても革命者か。ディメーンがそれほど重要な人物だったなんてネェ……。
僕ビックリ。
……頑張れとしか言えないけど、祈っているよ。

君に勝利の女神が微笑まん事を。

 

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「救世主、ねぇ。にっあわねぇ」

そういつも通り毒を吐くシルク。
相変わらず過ぎてもう慣れてしまった。
しかし、世界が違うだけでこうも違うものなのか……。
こっちのディメーンは極悪非道、片や向こうは救世主様。
まぁ、会った時から優しそうだったけれど。
ディメーンにも色々あるんだなぁって思ったら、もしかしたら僕らの世界のディメーンも何かしらそういう事があった被害者だったのかもしれないと思う。
もう居ない彼の事を思っても仕方ないけれど。
側で震えるスピネルを抱きしめる。
魔女とディメーンの激しい攻防が火花を散らす中、もう一人の僕がキョロキョロと当たりを見回していた。

「どうかしたのかい?」

「ん?あぁ……居ると思ってね、うちの兄さんがさ?」

彼はそう答えると魔女の後ろをスコープから覗き込んだ。
ほんの一瞬、彼の動きがある一定の場所でピタリと止まりニヤリと口角を上げる。

「みいつけた」

そう呟くと、僕に持っていたショットガンを投げ渡し見つけたであろう場所へ駆けていった。

 

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「みーっつっけたー!」

愛しき兄を見つけ耳元でそう言ってやる。
少し眉を顰めると、薄ら目を開け鼻で僕を笑う。

「おせーよ」

一言、悪態をつかれた。いつもの兄だ。

「しょうがないじゃない遠かったもの」

「そういう問題かぁ?」

「そういう問題なの。外傷はなさそうだね」

「内傷もねーよ」

グチグチと2人で言い合いながら、僕は兄を助け起こす。
うん、無事そうだ。

「そういえば」

「?」

「ここの兄さん、可愛かったよ?」

人差し指を口に当てクスリと笑って言ってやる。

「………へぇ」

兄は少しキョトンとした後、怒ったように眉を顰め口角を上げそう言った。

 

 

 


「さぁ、浮気されたくなけりゃ僕を満足させてよ?兄さん♪」

「途中で泣くなよ?愛しき弟君♪」

 

 

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ひっそりと、再開(待たせましたねごめんなさぁい!!!)

ルイージの小説外伝 2.5 穢れた世界の収束と再生編 第十一話

怒りに任せて威圧たっぷりに放った言葉に、周りの皆がその場で時を止めた。
こんなに殺気を放つのはいつぶりだろうか。
あぁ確か、アンダーグラウンドを追放された時もこんな感じで殺気を放ったっけな。

愛しき君よ、何故僕を見据え立ち塞がるのか。
もう貴女の意識は奥の彼方へ消えてしまったのか。

 


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少し、僕の話をしようか。

ずっと昔の事だ。
僕がまだ黒の魔法使いとしてアンダーグラウンドで暮らしていた頃、仲の良かった幼馴染みが居た。
彼女とは物心ついた時からずっと仲が良くって、毎日遊んでいたんだけれど。
彼女と違って僕は出来損ないだから。
親の関係で彼女とは段々疎遠になった。
出来損ないというには語弊があって、魔法なんてなんでも扱えたのだけれど。
そもそもどんな魔法でも扱えたのがおかしかったのだ。
中途半端に何でもかんでも使えて、彼女には器用と言われたけれど。
他の人にとっては出来損ないに等しかったのだ。

いつしか僕を毛嫌いする奴らは広がり、僕の居場所が亡くなってきた頃。
僕は初めて禁忌とされた狭間の魔法を使い、外の世界を見た。
その王国の美しく咲き乱れる花々の綺麗なこと!
映える綺麗な青空にさえずる小鳥たちの可愛らしい歌声。
どれも殺伐としたアンダーグラウンドにはないもの。
その王国は僕の心を惹き込み、次第に僕はその王国に何度も遊びに行くようになった。
だがある日狭間の魔法を使い外の世界に行っている事が両親にばれた。
焦る僕を見て呟くのはいつものセリフ。
「やはりお前は出来損ないのクソッタレだ」と、「産むんじゃなかった」と。
その内話は大事になり僕はアンダーグラウンドから狭間の世界へ、2度と戻ってこないようにと強力な魔法で醜い道化師の姿に変えられ放り出された。
最後まで聞こえていたのは、幼馴染みのなにかしらの必死の叫び声だった。

そこから色々あって時を越えて、ヒゲヒゲ君達にやらかして僕は死んで冥界に行ったのだけれど。
誰の慈悲かまだ死亡にはなっていなくって、幽体離脱状態で来てしまっていたらしく。
魔力と記憶を少しの間奪われ誰かに預けられ、もう1度彼らに会いに行ってその罪を償ってこいと言われた。

記憶を無くした僕はキノコ王国でルイルイ君に拾われ、ヒゲヒゲ君達と3人で暮らし始めた。
凄く楽しかったのを、覚えてる。
釣りをしたり、ゴルフをしたり、食事を共にしたり、料理したり、珈琲の淹れ方を教わったり。
何より記憶のある僕が誰よりも求めていた王国で念願の生活を手に入れたことが大きい。
充実していたし、僕も彼らに尽くした。
記憶を無くしても、彼らの事や償いの事は本能で覚えていたのだ。
彼らはそれに応えるように、地下世界から出来損ないの僕を今度こそ消そうとする輩から護ってくれた。

ある日、僕の幼馴染みだという女の人が家に訪ねてきた。
ヒゲヒゲ君達は警戒しながら彼女に応対する。
僕がひょっこり顔を出すと彼女は嬉しそうに僕に抱きついた。
彼女は、昔僕と共に遊んでいた幼馴染みその人だった。
そこで僕は、魔力の入った欠片を彼女に貰い記憶と共に復活して本当の姿にも戻った。
今までの優しさと、危険を冒してまで会いに来てくれた幼馴染み。
2つの事で柄にもなく僕は泣いてしまった。
オロオロするヒゲヒゲ君達にクスクスと微笑む彼女。
ただ優しくて暖かいその空間に癒され、僕は暫く泣いていた。

彼女は僕達と一通り話を終えると、僕にお幸せにと言って地下世界へと帰った。
曰く彼女は革命軍の一員らしい。
今の地下世界の現状を変えるべく頑張っているのだと言う。
君を巻き込みたくはないから、君はここで大人しく暮らしてなよ。と、彼女は僕にそう言って笑った。

言われた通りそこから僕は自分の力で幸せに暮らすべくキノコ街の一角で喫茶店を始めた。
珈琲の淹れ方やらなんやらは全てルイルイ君とルイルイ君のお嫁さんに教わって、何とか今も繁盛してる。
その間にランとも会ってドンパチして結局一緒に喫茶店で働いてたりと色々あったけど。
地下世界の号外新聞を見るまでは、平和に暮らしていた。

そう、それを見るまでは。

 

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手が震えている。
目の前の黒魔女に恐怖で怯えているんじゃない。
彼女を殺す事に、僕は戸惑いを感じてしまっているんだ。
この世界に赴く前、チビちゃんに言われたこと。

「彼女を殺す事は、即ちあの娘を殺す事と同一。でも、絶対あの娘はそれを望んでいるよ。だから、怯えないで。大丈夫、君には頼れる仲間がいっぱい居るんだから」

…………その通りだ。
彼女だってそれを望んでいるんだ。
だから僕は…オレはそれに答えなければいけない。

出来損ないの黒魔術師として。
君の幼馴染みとして。

 

 

出来損ないだった革命者として。

 

 

 

 


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彼は、地下世界の黒の魔法使いの産まれだ。
だが彼は黒の邪悪なる魔法だけではなく、白き聖なる魔法を使える素養も持ち合わせているんだよ。
故に彼は完璧な黒の魔法使いではないと、出来損ないと迫害されていた。

だがそれは違う。
彼は出来損ないじゃない。
逆なんだ。
彼は完璧で強く聡明な大魔法使いだったんだ。
そう彼は、あの地下世界を革命する為に産まれた救世主。

 

彼こそが…
この世界を変えることが出来る、
唯一無二の革命者なんだ。

 

 

 

やはり僕の出る幕はないかな…。
そう思って僕は魔力を増幅させるのをやめた。
疑問に思ったのだろうランやシルクが何をやっているんだと怪訝な顔をしてくる。

「いやね、任せましょうや。あの救世主様に」

そう、本物の英雄に。

 

 



そろっと復活

お久しぶりです。

私チビ・ゆきともうします。

ここ1年間で学校を退学したり、派遣会社へ就職したり、松に嵌ったり、Twitter始めたり、ノートパソコン手に入れて環境整ったり、コナン厨に堕ちたりと色々あってバタバタして来れなかったんですが今日からこちらの活動も再開したいと思います。

生存確認出来るように下にpixivだったりTwitter載せるんで良かったらそっちもどうぞ。

 

 

皆!!何にハマっても堕ちても僕はいまだにルイージもスピネルちゃんも誰も彼も大好きだかんな!!!!

 

Twitter→@chibi_yuki44(チビ・ゆき)

CAS→上記アカウントで進行中

pixiv→http://touch.pixiv.net/member.php?id=6486561

nanahttp://hibari.nana-music.com/w/profile/97276/