天国からの没シュート
『此方天国です』
ヒゲヒゲ君と闘って僕は負けた。勿論ルイルイ君も手に入れられる訳もなく、気が付くと僕は真っ青な空間に居た。霧が出ていて前はよく見えず、地面にある誰かの足跡だけが頼りという状態…常識なんて通じない場所に来ているのだろう。その証拠に、地面は空色をしていて今にも壊れそうなぐらい薄いのだから。本来動かない方が良いようなこの場所だが、懐かしい気配に釣られかなり歩いてしまっていた。
暫くすると白い大きな扉が見えてきた、二人、見たことがあるような男の人達が扉の前で立っている。僕に気付いたのか二人は此方を振り向きこう言い放った。
「此方天国だ」
「此方天国だぜ」
僕はポカンとしてしまった。『天国』という単語だけに反応したのではない、二人がヒゲヒゲ君とルイルイ君にそっくりなのだ。これは誰が見ても僕のようになるに違いない、だってあの英雄達が天国の番人をしているのだから。黙ってポカンとしている僕にヒゲヒゲ君に似た方(めんどくさいからMでいいや)が声をかけてきた。
「君…切符は?」
「…へ?何のことだい?」
「…………え?」
「…え?」
Mはポカンとすると少し困った顔をして元からしかめ面だった顔をもっとしかめ面にする、ルイルイ君に似た人(こっちもめんどくさいからLにしよう)に助けを求めるように見るがLは気付かずに僕を見ながら飴を頬張っていた。Mは「はぁ…」とため息を付くと、右耳に手を当て誰かと通信を始める。
「応答せよ、はいこちら01番、切符の所持確認出来ず」
その言葉に反応したLが口から飴を離してニヤリと笑う。
「黄色いロープ張ってやろうか?」
Lは意地悪そうにそう言うとまた飴を頬張り始める、MはそんなLを小突くと困った顔で此方を見るとLに目配せする。Lはめんどくさそうな顔をしながら飴を咥えるのをやめた。どうやらこの二人はヒゲヒゲ君とルイルイ君にそっくりだが、性格は反転しているみたいだ。
皆で困った顔(約一名はニヤニヤしているが)をしていると、薄い地面がピシッと音を立て亀裂が入る。びっくりしているとLが左耳に手を当て通信し、Mは心底不思議そうな顔をした。
「応答しろ、はいこちら02番、渡航の意思確認出来ず」
「笑止、何故此処にいるんだ?」
何故…此処に居るのだろうか?それは僕にもわからない、神のみぞ知るって奴だ。二人は僕をチラと見ながら顔を見合わせていた。
急に瞼が重くなる、同時に目の前の白い扉が開かれた。門番が開けたのだ。黒い、見覚えのある顔をした人は扉から出てきて側で僕に語りかける
『ほら、あっちに戻れ。お前は此処に来るにはまだ早いだろ?』
止まろうとしていた僕の心臓はいきなり動き出した、びっくりした僕を見てMはほっとした顔をして僕に優しく語りかけた。
「やはり単純な迷子か、早くお家へ帰りなさい」
対象にLは無理矢理僕を後ろへ振り向かせると、口悪く語りかける。
「じゃあな、もうちょっと年喰って老けてから出直して来な!」
そして僕はLに背押され急転落下した。歪みゆく景色に酔いそうになりながら僕は上を見上げると、既に二人の顔は歪みに歪んで分からなくなっていた。
瞬き二つ、次に目が覚めた時には僕は右手にルイルイ君の手を、左手にマネーラの手を握っていた。
-END-