チビ・ゆきのルイージの小説外伝

ルイージの小説外伝の置き場

ドッペル押し問答

未来の自分に絡まれた魔術師の話























僕ハ、呆気ナク倒サレタ。

「マスタークラウンでも…敵わないんだナァ…やめとけばよかったかナァ…」

呟きながら何の理由もなく、黒い海をプカプカと揺蕩う。目を瞑ろうとした僕は誰かに手を引っ張られ立ち上がらされた。びっくりして前を見るとそこには僕そっくりのようで少し違う僕がいた。でも今の僕の容姿とは髪の長さも服もちょっとずつ違う。

「キミサァ…そんなんばっか言って大切な奴いなくなってんジャン?ロストエンドデイドリーマーな虚言吐き続けるメダリスト?♪」

相手は僕に指差してそう言うと鼻で笑って立て続けにまくしたてる。

「キミはやっぱり子供のままで僕はチョット正直幻滅したヨォ…だってキミの大好きなモノなんでも成長してるシ、キミのやり方はきっと間違ってはなかったケド苦労はツキモノでサァ?別に何か説教したいわけでもないんだけどネェ?って聞いてるの?」

最初っから最後まで皮肉たっぷりのその文に僕は呆気に取られてポカンとしていた。聞いてるの?聞いてるヨ?ただね?すっごい嫌な気分なんだよネェ…?だから思いっきり嫌な顔をしてやると相手はため息をついて口を開ける。

「実は僕は、未来のキミなんだヨォ♪」

衝撃の事実ダ、こいつが未来の僕?皮肉たっぷりの言葉には納得したけど何故お前はここにいるんだヨ?

「この話信じられる?ヨネェ?ネェネェ?♪」

流石に言い方にイラっときた僕は思わず前に出ようとした、けどその行動は相手の指が目の前に指された事により止まった。

「あと一時間と二十分でキミは初めて全てを諦めるんダヨォ〜♪キミのそのシンパシーを飲み干して、心地よい倦怠感と夢を見なヨォ♪」

……うぜぇ…キミに何がわかるって言うんだヨォ…未来の僕という確証もないだロ?しかも僕と同じ声で話しやがって…ムカつくんだヨォ…?

だからサァ…?

「バイロケーションアイロニーな、ペラペラまくしたてるとことか、今、キミそんなんばっか言って未来の僕も対して変わらないネェ…?」

ここからは…

「…言うネェ……♪」

-反撃開始-だヨォ…♪

「じゃあさ、キミは何故にココに来てるノ?その理由を聞かせてくれヨォ?♪大方未来(そっち)の方でも居心地が悪くて逃げて来たんだヨネェ??」

僕が皮肉たっぷりににやけながらそこまで言うと、相手は目を細めて嫌悪感を見出してきた。いいヨォ♪もっと嫌そうな顔しなヨォ?♪

「もっと優しく褒めてヨォ♪そんなんじゃ全然足りないシ、ダメダメだネェ?♪性格も同じダロォ?分かるカイ?ほらもっと褒めてヨォ?………聞いてるのカイ?」

「聞いてるヨォ?」

「あぁそう?ネェネェ、いまどんな気持ちだい?♪聞かせてヨォ?ねぇ?ねぇ?ねぇ?ねェ?ネェ?ねぇってばぁ!?♪」

僕のとびっきりの嫌味にいよいよ黙った相手はふっと鼻で笑い僕にゲスな笑顔を見せてくる、あぁそう、もっと褒めてあげないと駄目みたいだネェ?そんな事を考えてニヤッと笑うと相手がニコリと笑って近づいてきた。驚いて少し後ろに下がると、相手は僕のことを押し倒してとびっきりの笑顔で僕に声をかけてきた。

「今、僕はね、とても気持ちいいんだヨォ…?この気持ち…わかるはずだよね?ね?ね?ね?ね?ネ?ネ?ネ?ネェ!?!?」

なんだコイツ…気狂いでもしたのかヨォ?呆気に取られていると相手は体制はそのままにまた嫌味を言い始める。

「あと一分と三十秒でキミは僕に身を焦がす怒りを知るヨォ♪ほら、グッとセンスのいい言葉で自分の素性をも吐き出してみろヨ!?♪」

相手は僕に顔を近づけるととびっきりのゲス顔でまたまくしたてた。

「バイロケーションアイロニーはいわゆる一つのカンフル剤だヨォ♪ほら、僕もそんなんばっか言って同じ穴のムジナだと言えるダロォ!?♪」

……相手の言う通りになったとかもうどうでもいい……

コイツマジでウザくてしつこくてゲスな野郎だヨォ…

「うるさいナァ!?チョット触んな!!あと近づくなヨォ!?」

本気でそう怒鳴ると相手がびっくりして口も動きも止まった、それを見て僕は相手を突き飛ばすと逆に押し倒して怒鳴る。

話聞いてるけどキミが何が言いたいかすら、わかんなくなってきたヨォ!?僕にどうして欲しいんだヨォ!?

「…」

相手は軽く息を吸うと、真顔で答えた。

「キミそんなんばっか言ってサァ…大切な奴いなくなってジャン?ロスト、フレンド、デイドリーマーなキミはマキャベリストになりたいだけかヨォ?」

「…………」

-僕の時は止まった-

結局こいつが言いたいことは「大切な奴がいなくなって悲しくないの?」ということだ。僕がへたり込むと相手は僕の押し倒しから抜け出して立ち上がり僕を見下ろして言った。

「あと五分と二十秒で、キミに迎えが来るヨォ?」


「……え?」


「せいぜい言い訳考えときなヨォ♪」

そう言うと相手は何処かへ消え去った。



そして五分と二十秒後、僕を迎えに来たのは……

「ヤホーマホロア、迎えに来てあげたよ?なに泣いてんの?そんなところで泣いてないでさっさと帰ろうよ♪」

「…………しょうがないネェ…帰ってやるヨォ…………」

ニコリと笑うピンクの勇者だった。









-end-