チビ・ゆきのルイージの小説外伝

ルイージの小説外伝の置き場

新ルイージの小説外伝 第一話

オッドアイと新人少女


キノコ王国の城下町近辺に、星降る丘という名所があった。真夜中で誰もいない静けさの中、少女はポツリとそこにたっていた。黒髪に映える青い色の瞳を細め、呟く。


「この世界を、終わらせはしない。私が命に変えても…あの二人は私が守る」


それは少女の誓いの言葉。これから巻き起こる物語の始まりの言葉。少女はその言葉と共に、その丘から姿を消した。

 

 

 

昼、猫の手に向かう一人の男の姿があった。名をルイージ。そう、有名な英雄マリオの弟君だ。この日依頼を終えたルイージは依頼を全て終えた事を報告するべく、猫の手の社長ルーニャの元へと向かっていた。会社に入り社長のいるであろう部屋の扉を数回ノックして開ける。そのままルーニャに声を掛けようとした瞬間、お腹の方に衝撃が走った。目の前にたなびく美しい黒髪に一瞬見とれながらも状況が把握出来ずに動揺する。周りを見るとルーニャがやれやれとしたといった様子でこちらを見ており、ルーニャの目の前に立っている見慣れない青い瞳の少女が居た。少女はこちらの方をじっと見つめると、興味が無いというふうに顔を逸らしてみせる。その様子に僕は、冷たい印象を受けた。しかしこの状況、一体何があったというのだろうか。僕の腕に収まる少女は震えており、恐らく泣いている。


「ルーニャ、一体何があったんだ?」


「まぁ、ちょっとにゃ。あぁ、ルイージ。その子、新人さんだにゃ」


ルーニャは目の前の少女を手のひらで指し示す。新人だと紹介された少女はこちらに向き直りぺこりと頭を下げた。


「…新人と何かあったのかい?」


「実はこの子、かなりの毒舌でにゃ。スピネルが会社の案内をしてたんにゃけど…まぁ、結果はこの通りにゃ」


毒舌な新人。そういう類の人といえばマネーラぐらいしか思い浮かばず、思わず対処に頭を抱えそうになる。


「この子、合格したのかい?」


「あとは実技試験だけにゃ。ルイージ、お願いするにゃ」


「…分かった」


スピネルをなんとか宥めて引き剥がし、ルーニャに預ける。顔には出していないが、これでも怒っている。少しだけ深呼吸し、行こうかと声を掛ける。少女は静かに頷き先に部屋の外に出た。


「…あくまで実技試験だから、あまり本気を出さないように…と言っておくにゃ」


「…怒ってるの、バレた?」


「バレバレにゃ、ほら行っておいで」


ルーニャに釘を刺され、しっしと追い出される。僕は、そのまま実技試験の会場へ向かった。

 

 

外へ向かうと彼女の方はもう準備が出来ているらしく、長かった両腕の袖を捲り楽に構えていた。


「行くよ?」


「……」


声を掛けても無言。だいぶ警戒されているらしい。さて、実力は以下ほどか。


「…サンダーハンド」


一気に彼女の目の前まで接近し、得意の拳を振るう。手応えはあった、だが彼女に一切のダメージは与えられていなかった。正確には当たっていたのが、突如出現した剣によって跳ね返されていたのだ。どういうことか、その剣は彼女の袖の中から姿を見せていた。僕は咄嗟に後ろに離れ警戒態勢に入る。少女はなにか呟き呪文の様なものを唱えると、先程まで剣だったものが華奢な右腕に戻った。体を武器に変える魔法なんて今まで見た事も聞いたこともなかった。それに、彼女が峰打ちにしていなければこちらが大怪我をおっているところだった。なるほど、面白い。次に少女は右腕をハンマーに変えるとこちらに接近しジャンプしてくる。上から攻撃するつもりなのだろうかと咄嗟に構えるも、その予想はいとも簡単に打ち砕かれた。少女は僕の真後ろに降り立つと、僕の背中目掛けてハンマーを思いっきり振るってきた。衝撃に吹っ飛ばされるも体勢を立て直し相手の方に向き直る。その時、少女の長い前髪が風に揺られその顔を晒した。少女の隠れていた右目は左目の青と対照的に、煌びやかに赤く光り輝いていた。

 

 

-続く…?-