チビ・ゆきのルイージの小説外伝

ルイージの小説外伝の置き場

ルイージの小説外伝3 第二話

全くもって解せない。行く宛のなさそうなこの子を社員としてここに住まわせようまでは分からないでもない。まぁ、可哀想だし。けど…

「何故戦闘相手が私なのか」

「手加減してあげてにゃ」

「そう思うなら尚更なぜ私なのか!!」

これでも社員の中では強者の部類に入るであろうと自負している私に、何故新人の相手を任せようと考えたのか。まぁ目の前に居たからだろうけど。せめて緑のとかで良いじゃない。なんで私なのよ。

「あのねぇ、テストだからって私手加減なんてしないわよ?」

「えー?そこをにゃんとか…」

「嫌よ、私のプライドが許さない」

「相変わらずだにゃ」

ルーニャの呆れたような声にふんっ、と顔を逸らす。当たり前だ。私は由緒正しき魔女なのだ。仮にテストだからって本気で来る相手に対し手加減なんてしたくない。というより手加減なんてしたらむず痒くなってしまう。特にあの少年。少しなよっとした所があの男にそっくりなのだ。余計に加虐精神が煽られてしまう。

「寧ろ本気出したいぐらい」

「にゃ、にゃにがシルクをそこまでさせるのにゃ…!?」

「とりあえず…頃合いを見て止めてよね?私やり始めたら止まれる気しないから」

ルイージ呼んでくるにゃ?」

「あれに、私が、止められるとでも?」

「私、頑張るにゃ」

あの男に止められるなんて冗談。だったらルーニャの方がマシ。二人でそんなことを言い合いながら予定の場所に着くと、ルノは先に準備して待っていたのかいつでも大丈夫だと言うふうに頷いてくる。怪我しても知らないからね、と忠告しながら私はつい癖で肩に乗った髪を退けようとしてしまう。そういえば最近邪魔になって髪を切ったのだった、うっかりうっかり。こほんっと一つ咳払いをし、構え直す。

「では、試験開始にゃっ!」

ルーニャの合図でルノが飛び出してくる。素人臭い真正面からの拳は私が魔法を使わなくとも避けられる程度のものだった。スキありと、右手を刃に変えルノの頬に切れ込みを入れてやると、そこから血が流れ始める。

「………なんにゃ…?」

「!!」

ルノの頬から流れた血が地面に落ちるより前に、その血は蛇のようにうねり剣のようなものを形作ってみせた。少し経って血が止まると剣はルノの体から完全に分離し、血の剣と変貌した。

「液体変化魔法…もしくはそういう体質…」

と少し思考を挟んだ瞬間、私の頬に切れ込みが入る。ルノの方を見ると赤い目が僅かに光を帯びている。帽子からはみ出た白い髪で彼がアルビノを患った者である事が容易に分かった。オッドアイの次はアルビノか。ふと私の可愛い幼馴染を思い出しかけ首を振る。模擬戦とはいえ試験中。相手である私がしっかりしなければ、そう思い直して右手の剣で彼の血の剣を弾き飛ばす。本番はこれからだ。ルノは弾き飛ばされた剣からは目を背け頬を傷に触れ爪を立てる。頬からまた垂れる血が彼の手の中で蠢きまた剣を形作る。普通なら躊躇する自傷を何の躊躇いもなく行い武器を作るところを見ると、あまり平穏な日々を過ごしてきたわけではなさそうだ。聞いてる限り記憶喪失でもなさそうだし、もしかしたらとんでもないところから来ているのかもしれないわね。まぁ、そんなの周りの人達のせいで今更戦慄するようなものでもないけれど。ルノが次に生成したのは複数の短剣だ。先程より慣れた手つきで短剣を扱い投げてくるところを見ると、長剣よりも短剣を投げる方が得意なようだ。すばしっこい上に投げてくる短剣が的確で早い。もしやあっちの方なのではと思うほどには上手い、というか不味い。

「このままだと負けそうだな…」

今回、相手が魔法を使うタイプではないと思って近距離で攻め込んでいたら、いつの間にやら完全に防戦一方になってしまった。こちらから攻め込むことが出来なくなってしまっている。

「さて…と。そろそろ決着をつけたいのだけど…」

負けて終わる、なんてのは癪に障る。そんなことはしたくない。どんな手を使っても勝ちたい。うん、四の五の言ってられっか。

「…?」

私が両手を下ろし右の腕を元に戻すとルノがポカンとした様子で止まる。その瞬間を狙い私は地面に手を付け魔法を唱えた。

「グレーブストーン!!」

途端にルノの足元の地面が隆起し、ルノを打ち上げる。

「っ!!」

打ち上げられた本人は咄嗟の出来事に動くことができずにいる。勝利を確信した私はルノの元にジャンプし右腕をハンマーに変えた。

「油断大敵ね」

私は微笑みながら彼に声を掛け、そのままハンマーを振り下ろしルノを叩き落とした。

 

 

結果、試験は合格。私はルーニャにこっぴどく叱られることになった。まぁ、ムキになって本気を出してしまったのは反省だ。後悔はしていないけれど。

「なんて無茶をしてくれるのにゃ」

「止めてって言ったじゃない」

「あんなん止められるわけないのにゃ!!」

そりゃそうだろう、そうならないように手早く終わらせたのだから。後悔の色がない私の表情に頭を抱えるルーニャ余所に、この場所に慣れない彼の方を見る。こっぴどく怒られている私を見て申し訳なさそうにしながら縮こまってる彼からは、先程の戦闘力が微塵も感じられなかった。比較的温厚な少年だが、あんな能力を持っているのであれば普通でないのは確か。あまりしたくはないが、警戒しておくに越したことはない。

「何はともあれ、これからよろしくね。ルノくん」

「…!…はい。よろしく、です」

にこりと笑いかける私に少しだけ目をぱちくりとさせるも、嬉しそうに微笑みながら彼はそう答えた。

ぼやきやき

つい2週間ほど前にルイージの小説外伝3を上げました。ぶっちゃけルーニャさん主体でほのぼのが書きたくて始めたので超絶スロー更新になりますが、それでも良ければゆるりとお付き合い下さい。

正直3までやるとは思ってなかった…Foolさんの世界観楽しすぎてね…!!If楽しいよIf。自分の方の地上と地下と双子の英雄もマターリ進めて参りますので、両方ともお楽しみ頂ければと思ってます、はい。

そういえば3になるにあたってシルクあたりの容姿が少しばかり変わるのでそれもあげようかと思ってます。シルク可愛いよシルク、お気に入り。

そういえばTwitter、全消去しました。色々ゴタゴタあり、仲の良かったフォロワーとのちょっとしたいさかいで脅迫まがいの事をされたりしたのでちょっと怖くて消しました。ブログは辞めないよ、辞めませんからね。でもTwitterでもお付き合い頂いてた方は急に消えちゃってごめんなさいね。ブログで仲良くしたってください。(長話したい方は鍵垢作るからそこでお話しましょう)

そういえば、スマブラ楽しいです。ジョーカー参戦にはお目目まん丸になりましたが、相変わらずマリオとカービィピカチュウルイージをローテーションで使いながら、イカちゃんとかロゼッタさんとかデイジーさんとか色々使ってます。スマブラ、オンライン、誰かやってくれる人居ないかな(フレコくれるならやれますよ)。

PQ2にスターアライズにスマブラ…そして来年にはKH3…あらやだ積みゲーが増えていく。毎日楽しいです。(WiiもあるのでGCゲームも何かやりたい感がある)

 

そんな、ぼやき。お付き合い頂きありがとうございました。

ルイージの小説外伝3 第一話

ある、晴れた日であった。
私はルーニャ、会社猫の手の社長だにゃ。
今は仕事の休憩中、散歩に来ているのにゃ。
ある土手に差し掛かった時のことにゃ。

「…………なんにゃ、あれ」

一人の少年が、倒れていたんだにゃ。

 

 

 

-深紅の宝石は平和な世界を夢見るか-

 

 

 

「………っ……」

会社、猫の手のソファの上で、その子は目を覚ました。ルーニャが連れて帰ってきたというボロボロの姿の青年はゆっくりと目を開けると、上体だけを起こしここは何処だと辺りを見回す。そして私を見つけるとパクパクと口だけを動かした。

「まぁ、待ちなさい。まずは水分補給をしなさいな」

私は少年に水の入ったペットボトルを差し出す。少年は私とペットボトルを交互に見ると、私に悪意がないと分かったのか受け取った。喉を鳴らしながら飲むとペットボトルを返すと手を突き出してきた。

「ありがとう、ございます」

やけに透き通った声だった。お礼を言われた私は頷いてペットボトルを受け取る。そして少年を真っ直ぐ見据え、質問をする。

「初めまして、貴方の名前は?」

「る………ルノ、です」

たどたどしくそう答えた。記憶をなくしているわけではなさそうだ、それなら問題ない。ルーニャを呼んでこよう。
立ち上がろうとすると、不思議そうに少年はこちらを見る。

「少し待っていてくれるかしら?」

少年は、静かにうなずいた。


ーーーーーーーーーーーーーーー

「起きたのにゃ?彼」

「起きた。水も飲ませたから会話も出来るし、記憶喪失な訳でもなさそうよ」

「そっかぁ、なら安心にゃー」

そう言ってケタケタ笑う私を苦笑混じりに見つめているシルク。少年を保護してきた時にはばっかじゃないの?なんて言われたが、持ち前の面倒見の良さでお世話してくれた。流石はシルク、相変わらずだにゃ。

「んじゃ、私もいってくるにゃ」

「あの子、ルノっつったっけ。どうする気よ、何も考えずに拾っちゃってさ?」

「行く宛がないなら会社に入れるにゃ」

「あっそう?………はぁ!?」

「じゃあにゃー」

「あ、ちょ、待ちなさいよ、ルーニャ!?」

大声で叫ぶシルクを尻目に、私は社長室をあとにする。反対されるのは分かっていた。見ず知らずの少年を会社に引き入れるなんて。でももし、あの子に居場所がないのなら、私と同じ境遇を辿った者なら。

「放っておけるわけがないのにゃ」

廊下を歩きながら呟く。きっと、ルイージなら。あの時の彼なら。私と同じようにそうしてくれる。私がそうされたように。

ーーーーーーーーーーーーーーー

「おっきたっかにゃー!」

扉を荒々しく開けると、ルノという少年はビックリしながらこちらを見る。どうやら元気そうだ。

「大丈夫かにゃ?どこぞで倒れてたから担いで連れてきちゃったのにゃ」

たはは、と苦笑すると少し戸惑ったように頷く。さて、問題はこの子がどこから来たかだ。

「色々、聞いていいかにゃ?」

少し間を置いて、少年は頷いた。それを確認し、私は少年の隣へ座り質問を投げかける。

「君はどこから来たのにゃ?」

「…遠い、所。真っ暗、で、人も少なくて」

たどたどしく言葉を紡ぐ青年。恐らくあまり言葉を知らないのだろう、必死で知っている言葉を連ねているように見える。
遠い所で真っ暗、そんな所あっただろうか。

「じゃあ、なんで君は倒れてたのにゃ?」

「わからない、です。いきなり、暗い所、から、明るい所に、出た」

いきなり連れてこられたとでも言いたいのだろうか。これじゃ瞬間移動でもさせられたのかとしか思えない。いや、実際そうなんだろうが。

「明るい所、歩いてた。お腹、空いて…」

あそこの近くまで歩き続け、衰弱して倒れた。そういう事らしい。

「なるほどにゃー。それじゃ君には今行く宛はないってことでOKにゃ?」

コクリと、頷かれた。シルクが着いてきていたのかこちらをジッと見ている。判断はもう任せたということなのだろう。なら、答えは一つしかない。

「じゃあ、私と一緒にここに住むにゃ?」

私の問いかけにまたも少年はびっくりした顔でこちらを見る。一緒に住んでいいのというキラキラしたその瞳に、思わず私はキュンっと胸を踊らせてしまう。この子、可愛い。例えるなら、スピネル。

「遠慮はしなくてもいいにゃ、条件はあるけど」

条件という言葉に目をぱちくりとさせる彼を横目にシルクを呼ぶ。渋々私の隣まできたシルクを両肩に手を置きニッコリと微笑む。

「この子と、勝負してくれたらOKにゃ♪」

「…………は?」

シルクが振り向きポカンとする、少年も同じくポカンとした様子でこちらを見てみた。

「私なんか変な事言ったかにゃ?」

「めっちゃ言ってる。言っちゃってる」

シルクの驚いた声に首を傾げる。ここに住むということは会社に入ってもらうということだ。そりゃもう、試験は受けてもらわないといけないだろう。

「まぁとりあえず、さっさと行くのにゃー」

「え、ちょ、待ってってば、ルーニャ!?」

シルクの抗議の声を無視し、シルクとルノを連れて戦いの場へと赴いた。
これから、楽しくなりそうにゃ!

 


-続く-

新ルイージの小説外伝 第一話

オッドアイと新人少女


キノコ王国の城下町近辺に、星降る丘という名所があった。真夜中で誰もいない静けさの中、少女はポツリとそこにたっていた。黒髪に映える青い色の瞳を細め、呟く。


「この世界を、終わらせはしない。私が命に変えても…あの二人は私が守る」


それは少女の誓いの言葉。これから巻き起こる物語の始まりの言葉。少女はその言葉と共に、その丘から姿を消した。

 

 

 

昼、猫の手に向かう一人の男の姿があった。名をルイージ。そう、有名な英雄マリオの弟君だ。この日依頼を終えたルイージは依頼を全て終えた事を報告するべく、猫の手の社長ルーニャの元へと向かっていた。会社に入り社長のいるであろう部屋の扉を数回ノックして開ける。そのままルーニャに声を掛けようとした瞬間、お腹の方に衝撃が走った。目の前にたなびく美しい黒髪に一瞬見とれながらも状況が把握出来ずに動揺する。周りを見るとルーニャがやれやれとしたといった様子でこちらを見ており、ルーニャの目の前に立っている見慣れない青い瞳の少女が居た。少女はこちらの方をじっと見つめると、興味が無いというふうに顔を逸らしてみせる。その様子に僕は、冷たい印象を受けた。しかしこの状況、一体何があったというのだろうか。僕の腕に収まる少女は震えており、恐らく泣いている。


「ルーニャ、一体何があったんだ?」


「まぁ、ちょっとにゃ。あぁ、ルイージ。その子、新人さんだにゃ」


ルーニャは目の前の少女を手のひらで指し示す。新人だと紹介された少女はこちらに向き直りぺこりと頭を下げた。


「…新人と何かあったのかい?」


「実はこの子、かなりの毒舌でにゃ。スピネルが会社の案内をしてたんにゃけど…まぁ、結果はこの通りにゃ」


毒舌な新人。そういう類の人といえばマネーラぐらいしか思い浮かばず、思わず対処に頭を抱えそうになる。


「この子、合格したのかい?」


「あとは実技試験だけにゃ。ルイージ、お願いするにゃ」


「…分かった」


スピネルをなんとか宥めて引き剥がし、ルーニャに預ける。顔には出していないが、これでも怒っている。少しだけ深呼吸し、行こうかと声を掛ける。少女は静かに頷き先に部屋の外に出た。


「…あくまで実技試験だから、あまり本気を出さないように…と言っておくにゃ」


「…怒ってるの、バレた?」


「バレバレにゃ、ほら行っておいで」


ルーニャに釘を刺され、しっしと追い出される。僕は、そのまま実技試験の会場へ向かった。

 

 

外へ向かうと彼女の方はもう準備が出来ているらしく、長かった両腕の袖を捲り楽に構えていた。


「行くよ?」


「……」


声を掛けても無言。だいぶ警戒されているらしい。さて、実力は以下ほどか。


「…サンダーハンド」


一気に彼女の目の前まで接近し、得意の拳を振るう。手応えはあった、だが彼女に一切のダメージは与えられていなかった。正確には当たっていたのが、突如出現した剣によって跳ね返されていたのだ。どういうことか、その剣は彼女の袖の中から姿を見せていた。僕は咄嗟に後ろに離れ警戒態勢に入る。少女はなにか呟き呪文の様なものを唱えると、先程まで剣だったものが華奢な右腕に戻った。体を武器に変える魔法なんて今まで見た事も聞いたこともなかった。それに、彼女が峰打ちにしていなければこちらが大怪我をおっているところだった。なるほど、面白い。次に少女は右腕をハンマーに変えるとこちらに接近しジャンプしてくる。上から攻撃するつもりなのだろうかと咄嗟に構えるも、その予想はいとも簡単に打ち砕かれた。少女は僕の真後ろに降り立つと、僕の背中目掛けてハンマーを思いっきり振るってきた。衝撃に吹っ飛ばされるも体勢を立て直し相手の方に向き直る。その時、少女の長い前髪が風に揺られその顔を晒した。少女の隠れていた右目は左目の青と対照的に、煌びやかに赤く光り輝いていた。

 

 

-続く…?-

ルイージの小説外伝 短編2

-聖夜の宝石-

 

 

「ばっかじゃないの?」

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社内に、シルクのそんな声が響く。向けられた声は、主に目の前の僕にグッサリ刺さっていた。

「え、なに?ヘタレ?ヘタレなの?」

更に続く毒舌がまたもや僕に刺さり、なんとか持ち応えようと顔を上げるもシルクの冷たいを通り越して蔑んだようなその目に射抜かれた。もちろん、顔を下げた。

「たかがクリスマスに一緒に外食するだけなのになにをそんなに躊躇してるのよ。バカか、ヘタレか、童貞か」

三拍子、しっかりと僕に突き刺さった。

「まぁまぁ落ち着くにゃ。ルイージだって苦労したくて苦労してるわけじゃないのにゃ」

ルーニャのフォローに思わず僕は涙目になる。そう、苦労したくて苦労しているわけではない。ただ、クリスマスの夜に改まってスピネルを外食に誘うのがとても気恥ずかしいだけなのだ。そう、とても照れ臭い。いつものように誘えばいいだけの話なのだろうが、それがクリスマスの夜ともなるとなんというかこう…照れ臭いのだ。

「うん、でもね。ここまで童貞丸出しなのどうなの」

「でもクリスマスの夜に女の子を誘って外食ってちょっと勇気がいるにゃ」

「クリスマスの夜も正月の夜も盆の夜も変わんないわよ、同じ夜よ。なに、なんかする気なら私の右手が唸るわよ」

「落ち着くにゃ!?」

「落ち着いてくれ」

右手を刃物に変えてみせるシルクを思わずルーニャが取り押さえる。いや、もちろん何もする気はない。ありえない。ただ外食して、ツリーでも見て帰るだけだ。

「そんなことはしないから…」

「あぁ、する勇気もクソもなかったわね。失礼したわ」

トドメを刺された気がした。胸が苦しい。本当に槍でも刺さっているのかというぐらいにはグッサリと言葉が胸に刺さっている。これが言葉の暴力というものだろう。

「で、どーすんのよ。もう24日、昼。大体誘うならもっと早く誘うべきね。相談するにしても遅すぎ。今夜じゃない、聖夜」

シルクの言う通りだ。依頼にかまけて思考を放棄して数週間。放置しすぎた結果がこの始末。

「そろそろ泣けそうだ」

「やめて、大の男の泣き面とか需要ないし。ていうか聖夜に何も予定がない私たちにその相談をしてる時点で泣きたいのはこっちなのよ、リア充爆発しろ」

「シルク、いつもよりイライラしてると思ったらそういうことだったのにゃ」

返す言葉もない。というか返したら返したでなんと返ってくるか分からない。

「よう、なにしてんだ?」

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「あ、クソ兄貴」

「セルヴィ!よく来たのにゃ!」

三人で向かい合っている空間に、一人救世主が現れた。

「せ、セルヴィ…!!」

「え、どうしたルイージ。めっちゃ涙目じゃん」

オロオロとし始めたセルヴィはシルクやルーニャの顔色からとりあえず僕がピンチなんだということを察してくれたらしく、とりあえずハンカチを差し出してきてこれで涙を拭きなさいと言ってきた。セルヴィ…紳士だな…。ハンカチで涙を拭きながら、とりあえず事情を説明する。

「はーん、なるほど。確かに男には最大の難関だな」

セルヴィは苦笑しながらハンカチを受け取ると、首を傾げて少し考え込む。そして何かを閃くとニンマリと微笑んだ。

「ぶっつけ本番するか」

その言葉に首を傾げる僕達を横目にセルヴィは絶対に上手くいくという確信に満ちた顔で微笑んでいた。正直僕は、嫌な予感しかしなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

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「マジでこれでいいの?」

「行ける行ける」

「ちょっと心配だにゃ」

心配そうに草むらの影からルイージを見守る私達三人。その三人を横目に彼は慣れない空間での待ち合わせに体が固まっていた。兄貴が言うぶっつけ本番とは、夜にスピネルを外食場所まで呼び出しそのまま外食してしまえという事だった。まさに、ぶっつけ本番である。

「守備は大丈夫だよな?」

「お洒落して行くようにちゃんと言ったわよ。服もちゃんと選んであげたし」

あのあとルイージの家まで行きスピネルに待ち合わせ場所を伝えると同時に、スピネルを可愛らしくコーディネートしてあげた。ルイージルイージで少しはまともな格好をして来ているので、釣り合うようにはなっているはずだ。

「あ、来たのにゃ」

スピネルとルイージが待ち合わせ場所で出会い少しどぎまぎしながらも店内に入っていくのを確認し、私達は安堵のため息をついた。

その後しばらく経つと二人が店内から出てきた。どうやらそのあとも事がよく進んだらしく二人ともいい顔をしている。と、スピネルは先に大通りへ向かいルイージだけがこちらに向かってきた。

「…どうしたの?」

目の前まできたルイージに兄貴が思わず声をかける。ルイージは微笑むと箱を差し出してきた。

「おかげで何事もなく楽しめたから、お礼にね」

「もしかして…」

「ケーキにゃ!?」

ルーニャと兄貴が興味津々で箱を開けると、箱の中には三つの可愛らしいショートケーキが入っていた。わざわざ私達のために買ってきてくれたのだろう。

「いいの?」

「うん、お礼だよ。三人もこれを食べて楽しんでくれ」

「…気持ち悪」

ルイージは嬉しそうにそう言う。私も悪い気はしなかったので、照れ隠しの毒を放っておいた。

「じゃあ、スピネルが待ってるから」

ルイージはそう言うと手を振ってスピネルが行った方へと去っていく。私はケーキに舞い上がる年上二人の首根っことケーキの箱を掴んで、猫の手へと足を進ませる。

今年は、少しはマシな聖夜になりそうな気がした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

雲の上、一人のヒゲの生えた青年がじっと下のほうを見つめている。その姿にクスリと笑ったとある天使が、青年に向かってわっ!と驚かし声を掛けた。青年はビックリして振り向くと、天使の笑顔に思わず安堵の表情を浮かべた。

「なにしてるんですか、ユキさん…」

「君こそ!弟君のデートを覗き見かい?」

「そんなつもりはないですけど…まぁ、気になるというか」

天使のクスクスと笑う声に少しだけバツの悪そうな顔をする青年。下界の様子が気になるのかチラチラと目線を逸らしている。

「まぁまぁ、大丈夫だよ彼らなら。ほら、私達もケーキ食べない?」

「いいんですか?」

「もち、奢りだよ」

「わー、ありがとうございます!」

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嬉しそうに微笑む青年に満足した天使は、箱に入ったショートケーキの一つを皿に乗せフォークと共に青年に渡す。自身の分も用意し顔を見合わせると、頂きます!と声を揃えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆HappyMerryX'mas☆

ルイージの小説外伝 短編1

-お化けの宝石-

 

あの事件から一ヶ月後。
特に何があるわけでもなく平穏な日々を僕らは過ごしてきた。

だがしかし、平穏な日々はそう簡単に長く続くものではなかった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー


「………ねぇ、これどういう状況なわけ?」

「さぁ…」

二人が途方にくれているのはわけがある。
僕ら三人は迷子の猫探しの依頼に紛争してきたところであった。猫を飼い主に返した後、疲れて帰ってきてルーニャに終わったことを報告しようと扉を開けたのだが………。

「……………………」

「頼む!マジで!!本当ニ!!!困ってるんダヨ!!!」

「いや、とりあえずちょっと落ち着いて欲しいのにゃ」

ルーニャに土下座しながら頼み事をする相手。それは僕がこの世で最も苦手とする相手だった。扉を開いた瞬間、目の前にお化けと猫娘が対峙していたのだ。
そう、僕の苦手な、お化けが。
僕が後ろに一歩下がるとそのお化けは僕の存在を見つけハッとした顔をする。やばいと思って逃げようと思った瞬間だ。

さすがおばけくそはやい。

しゅるりと僕の目の前まで飛んでくると、僕の両手をガッチリ掴んだ。お化けのくせに。
そしてウルウルとした目で僕の目を見つめながら必死に叫び始める。

「るいぃじいぃぃぃー!頼むヨ!!助けテクレ!!!」

やめてくれ、卒倒しそうだ。

「ちょっとキングテレサ、いい加減に泣きやみなさいよ。何があったのよ」

見かねたシルクが溜息をつきながら目の前のお化けに問いかける。
やっと話が出来るとキングテレサはパァっと顔を明るくさせて、シルクの両手を掴んだ。

「よくゾ聞いてくれタ!!!!」

「ウザい、離れろ」

「実はダナ………」

この後、キングテレサから語られる話に衝撃が走る。
ただ、この時僕はまだ知らなかった。
今日という1日が平穏で過ごせなくなるだなんて…。

 


これは、長いながぁい一日の話。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー


「はぁ!?屋敷から追い出されたァ!?」

シルクが大声で叫んだ。それはもう、社内中に響くぐらいに。周りの皆が驚いてこちらを見るも、仕事があるのかそそくさと散っていく。見かねたスピネルがしぃ…と口に手を当てると、声を発した当の本人は少しバツの悪い顔をして口をつぐんだ。一連の流れを見ていたキングテレサが、話してもいいかと口を開ける。

「そうだヨ……追い出されたちまッタんだよ……」

「どうしてそんなことになったんだい?」

「…………」

僕がそう聞くと、何故かキングテレサは黙る。先程までの饒舌が嘘のようだ。表情を見る限り、なんと言えばいいのか分からないようにも見える。スピネルと僕が顔を見合わせ困っていると、シルクが大きくため息をついた。

「………行ってみるしかなさそうね」

「え」

思わず僕は固まる。
行ってみる。それ即ちキングテレサの屋敷に直接様子を見に行くということだろう。

あの、キングテレサの、お化け大量の、屋敷に、直接、出向く。

………シルク…君ってやつは…。

「無理に決まってるだろう」

「あいっかわらずビビりね、このチキンが」

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無理だと言えば予想通りの毒舌が帰ってきた。会った当初よりはマシになったと思っていたのだが気のせいだったようだ。そういえば前もこんな展開あった気がする。ライレイといい、あの悪霊を操る女といい、キングテレサといい、何故こうも僕はお化けに寄り付かれるのか。

「い、行って、くれるノカ!?ありがたいゼ!」

キングテレサは感激した様子でシルクを見つめる。シルクも満更ではなさそうだ。
そういえば…キングテレサってこんなユーモア溢れる奴だったっけ。もっと不気味な感じだった気がするんだけど…もしかしてそれほどまでに切羽詰まっているのだろうか…。
…考えていても仕方が無い、腹を括らなければ。

「…ルーニャ、少し行ってくるよ」

「了解だにゃ!気を付けて行くのにゃー」

「スピネルは先に家に帰って、留守番しておいてくれるかな?」

「ん…任せて。気を付けて、いってらっしゃい」

ルーニャはやれやれと言った様子で、スピネルは少し心配した様子で返してくれる。
こうして僕らはキングテレサに連れられて、キングテレサの住んでいるお屋敷へと向かったのであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

「これは……」

「追い出されたと言うよりは………」

「…………」

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おどろおどろしいテレサの森を抜けた先にある、キングテレサの屋敷。僕らはキングテレサに連れられてそこにやって来た。途中テレサと出くわしたりなんたりで色々あったが、そこはまぁお察しの通りなので省略させてもらおう。
そんなことよりも、重要なのは僕らが今唖然として見ているこの屋敷だ。一見、電気が全て消え、部屋中真っ暗になっているため余計おどろおどろしく見えるだけのただの屋敷なのだが…。その窓一つ一つをよく見てみると違和感があるのだ。それもそのはず。窓をじっと見ると何かがウゴウゴと蠢いている様子がわかるのだ。そう、屋敷の中で、窓に張り付き蠢いているのだ。得体の知れない何かが。
それだけでも怖いのに、さらに良く見ると何かが黄色く光っているのだ。

それは、無数の目だった。

察しの良い皆様ならもう屋敷の中に蔓延るものの正体がわかったであろう。

 

 

……そう。

 

『もあもあーっ!!』


無数の、モアモアだ。

 

「どーなってんの、あれ」

シルクが依然として変わらぬ表情で屋敷を指さす。モアモアはもはや屋敷全体に蔓延っているらしく、玄関からはみ出ている者もいる。キングテレサに寄るとこのモアモア達はつい先日数匹見かけたのが大増殖した結果らしい。キングテレサテレサ達は先日の数匹がこんなに増殖するとは思ってなかったらしく、放置していたそうだ。
そして夕方、ガサゴソという音に目を開けると、もう目の前は地獄絵図だったらしい。大慌てで屋敷の外へ飛び出て、涙目で猫の手に駆けつけたそうだ。
よく冷静に猫の手に駆け込んでくれたよ、僕だったら一回気絶してる。

「アイツらどうにか出来ねーカ?」

「うーん…どうする、ルイージ?」

シルクが困ったように僕を見る。魔法でどうにか出来ればいいのだが、なにせ状況は屋敷を人質の様に取られているのが問題だ。迂闊に荒療治は出来ない。魔法で一掃、というのは不可能そうだ。

「何か…道があれば……」

別の道……魔法やフラワーパワーを使わない道……。何かあるだろうか…。こうしている間にもモアモアは増殖を続け屋敷を飲み込もうとしている。
…待てよ?そもそもモアモアは何処から来たんだ?随分前に兄さんと対峙した時は魔女が放っていたというのを聞いたことがある。
もしかして今回もモアモアを放った何かが居るんじゃないのか?そこまで思って周りを見渡す。近場、森の木の影。揺れ動く影はそこにあった。

「えっと…出ておいで。怒らないから」

僕の言葉にキングテレサとシルクはキョトンとしてあたりを見渡す、するととある木の影から人影そのものが出てきた。二人がその様子にギョッとした顔をするも、その人影の正体がわかったのかすぐにハッとした表情に変わる。

「どうしてモアモアを出現させたんだい?ビビアン」

「ご、ごめんなさぁ〜い!!」

帽子を被り女の子のような髪型をしたその影、ビビアンは僕らに頭を深々と下げた。影三姉弟の末っ子、ビビアン。彼女…いや、彼も長女、次女と同じく魔法を操る種族だ。今回モアモアを出現させたのはこのビビアンだろう。

「森で密かに魔法の特訓をしていたら……誤ってモアモアを出現させてしまったの。2~3匹だけだったから大丈夫かと思ったんだけど……」

「こんなに増殖しちゃったのか……元に戻すのは難しそうかな?」

「この量は…かなり………。ご、ごめんなさぁい…!」

ビビアンは深く反省しているのかしょんぼりとした顔つきで何度も謝る。しかし、この量を戻すのが無理となるとやはり大本を潰すしかない。そうなると………。

「モアモアを一度外に出してから、大本を叩かなきゃいけないわね………」

「でも玄関開けたらもう溢れだしそうダゼ、ドウすんだ?」

「ううーん…」

皆で頭を抱えていると嫌な音が響く。

ビシッ…ビキッ……バキッッ。

何かが折れた音に、屋敷の方を恐る恐る見る。

「あ」

…とシルクが声を上げた瞬間だった。
屋敷の扉が音を立てて弾き飛んだ。中からはワッとモアモアたちが飛び出す。
構えた時にはもう遅くこちらに向かうモアモア達に呆気に取られながら飲み込まれた。

 

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「………っ……!」

ハッと目が覚める。気を失う前までの喧騒はどこへやら、何があったのかあたりは静かになっていた。周りには同じく気を失っているキングテレサやシルクがいる。はて、ビビアンは何処へ…?キョロキョロとあたりを見回してもビビアンの姿はなく、それどころかモアモアの一匹も見かけない。
まさかあれは夢…?

「おーい!大丈夫かにゃー!?」

遠くから響く声、そちらの方に振り向くと見えた見慣れたその姿に安堵しながら立ち上がる。ルーニャだ。

「一応、大丈夫だ。ルーニャこそどうしたんだ?」

息切れしながら大慌てで駆けつける彼女に、もしや何かあったのではないかという不安に駆られ尋ねる。すると案の定興奮した様子で僕に用件を伝え始めた。

「な、なんか、凄いもあもあした大群が、城下町にいっぱい蔓延ってるのにゃ!アタシ達だけじゃ対処しきれない量なのにゃ〜!ビビアンちゃんも流石に戻すのは難しいって泣いちゃうし…!」

あぁモアモアよ……僕らを踏みつけて行った先は城下町だったのか…。そしてビビアンは影に隠れて避け、追いかけたと…。そうか、なるほど、分かったよ。

大問題に発展してるじゃないか…!!!

「シルク!キングテレサ!起きるんだ!!」

「ふぁっ!?もあもあしてない!?真っ黒どこ!?」

「ウガッ!?」

シルクはぶんぶんと首を振り当たりを見回しながら、キングテレサは驚いたようにバッチリと目を開けた。二人共現在の状況を確認すると、声を掛けたであろう僕の方に振り向く。僕はそんな2人に今の現状を伝えた。

「え、ちょ、それどーすんのよ」

シルクの最もな問いかけに天を仰ぎ考え込んでみせる。そもそもあの大群にどう始末をつければ良いものやら。

「いやはや大変そうだねぇ」

「あぁ、本当に大変だよ。こんな大量のモアモア、どうすれば始末できるんだ…」

「次元ワザでどっかの空間に一気に移動させちゃえば楽チンなんじゃないかなぁ〜♪」

それもそうだ!…だが次元ワザを扱えるやつなんてもうこの世には………。

………ん?ちょっと待て。僕は今……、

 

 

誰と話しているんだ???

「( *・ω・)ノやぁ、ルイルイ君♪」

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「……う、ウワァァァァァァァァァァァァァァァァ!!??」

「ちょ、なに!?なにごと!?……って、なにしてんのよ、ディメーン」

突如現れ僕に話しかけてきていたのは、つい一ヶ月前に出会い、お世話になったもう一人のディメーンだった。僕の叫び声に驚いたシルクは、ディメーンを見た瞬間溜息をつきながらディメーンに尋ねる。キングテレサはコイツ誰ダ?的な表情を浮かべているし、ルーニャに限っては…………。

「………なんで、こいつが、ここに、いる、のにゃ…?」

明らかに殺気を放っている、ヤバイ。そういえば一ヶ月前に起こった出来事はルーニャは記憶してないんだった。

「わぁ、こわぁい猫娘さんがいるー。ま、そんなに殺気放ってる場合じゃないんだから!リラックスリラーックス♪」

「なんにゃこいつ、知ってる奴と違うけどやっぱりムカつく奴だにゃ」

「え、なに、僕今回もこんな扱いなの??」

ルーニャを宥めるも逆にムカつかれているディメーン、自業自得だろう。だがしかしここでやいやいと言い合っている場合でないのは確かだ。話を進めなくては。

「ディメーン、次元ワザで異空間に捨てることは本当に可能なのか?」

「可能だよ。次元ワザで宇宙空間に飛ばしちゃえばあとは自動的にチリになってくれるさぁ〜♪」

簡単に言うが…まぁこのディメーンなら信用出来そうだ。問題は…。

「あんな沢山の量、どうやって次元ワザで移動させるんだ?」

「うーん、そこが問題なんだよね。せめて一箇所に固められればいいんだけどー……」

腕を組み悩むディメーン。やはりバラバラの個体を飛ばすのには時間がかかるらしいのか、一箇所にまとめて次元ワザで放り込む方が効率的だということらしい。

「ルイルイくーん、どうにか出来ない?」

「………」

どうにか…出来たらいいんだがなぁ…。

「一纏めになんてどうすれば…」

「オイ」

考えることを諦めようとしたその時だった。今までずっと考え込んでいたキングテレサが口を開けた。

「あ〜……うちのテレサ達、使うカ」

そう提案すると口笛を吹き大量のテレサを呼び寄せる。僕は慌ててルーニャの後ろに隠れた。テレサ達は何処に隠れていたのかというぐらい集まっていて、キングテレサから何かを聞いている。その内一斉に頷くと、城下町に向かって飛び出していった。キングテレサは一連の事が終わるとこちらに向き直り一言。

「ナントカ出来そうダゼ」

と、いつも通りの薄気味悪い笑顔で微笑んだ。

 

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街中、作戦は決行された。


「いいねいいねぇ〜♪これならいけそうだよ」

ディメーンの目の前には無数のテレサ達におしくらまんじゅう状態のモアモア達。
キングテレサの作戦が上手くいったようだ。
まさか、テレサ達を使ってモアモアを集めるとは…怖いけど流石はテレサの王だ。

「さ、モアモア君たち。ぐんない♪」

ぱちんっ、と指を鳴らす。
途端に次元が歪み、目の前のモアモアたちはパッと消えた。

「……お、終わった、か」

「終わったわね」

「任務完了〜♪」

「なんか疲れたにゃ…」

「ダナ……」

「ご、ごめんなさいー!」

何もいなくなった原っぱに、ビビアンの謝る声が響いた。

 

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「意外に呆気なかったなぁ……」

猫の手にそのまま帰った僕は、帰りが遅くなった僕を心配して迎えに来てくれたスピネルと合流し机に突っ伏した。体力の限界だったのだ。

「その割には、疲れてるね」

スピネルの言葉に頷く。ほとんど何もしていないが、大変なことがありすぎて体がついていけていないのだ。それだけで、人間こうも疲れるものなのか…。

「ルーニャはどうしたの?」

あたりをキョロキョロし、先程まで居たはずのルーニャを気にかける。そういえば、見当たらないな。

「依頼かもしくは…散歩にでも行ったんじゃないのか?」

「そっか………」


何かが気になるようだが、いない人の事を考えていても仕方はない。とにかく今日は疲れた…。帰ってご飯食べて寝たいなぁ…。

ルイージ、疲れてるね。そろそろ帰ろう?」

小さな微笑みに、僕は頷きを返して立ち上がった。

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-End-