チビ・ゆきのルイージの小説外伝

ルイージの小説外伝の置き場

ルイージの小説外伝3 第一話

ある、晴れた日であった。
私はルーニャ、会社猫の手の社長だにゃ。
今は仕事の休憩中、散歩に来ているのにゃ。
ある土手に差し掛かった時のことにゃ。

「…………なんにゃ、あれ」

一人の少年が、倒れていたんだにゃ。

 

 

 

-深紅の宝石は平和な世界を夢見るか-

 

 

 

「………っ……」

会社、猫の手のソファの上で、その子は目を覚ました。ルーニャが連れて帰ってきたというボロボロの姿の青年はゆっくりと目を開けると、上体だけを起こしここは何処だと辺りを見回す。そして私を見つけるとパクパクと口だけを動かした。

「まぁ、待ちなさい。まずは水分補給をしなさいな」

私は少年に水の入ったペットボトルを差し出す。少年は私とペットボトルを交互に見ると、私に悪意がないと分かったのか受け取った。喉を鳴らしながら飲むとペットボトルを返すと手を突き出してきた。

「ありがとう、ございます」

やけに透き通った声だった。お礼を言われた私は頷いてペットボトルを受け取る。そして少年を真っ直ぐ見据え、質問をする。

「初めまして、貴方の名前は?」

「る………ルノ、です」

たどたどしくそう答えた。記憶をなくしているわけではなさそうだ、それなら問題ない。ルーニャを呼んでこよう。
立ち上がろうとすると、不思議そうに少年はこちらを見る。

「少し待っていてくれるかしら?」

少年は、静かにうなずいた。


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「起きたのにゃ?彼」

「起きた。水も飲ませたから会話も出来るし、記憶喪失な訳でもなさそうよ」

「そっかぁ、なら安心にゃー」

そう言ってケタケタ笑う私を苦笑混じりに見つめているシルク。少年を保護してきた時にはばっかじゃないの?なんて言われたが、持ち前の面倒見の良さでお世話してくれた。流石はシルク、相変わらずだにゃ。

「んじゃ、私もいってくるにゃ」

「あの子、ルノっつったっけ。どうする気よ、何も考えずに拾っちゃってさ?」

「行く宛がないなら会社に入れるにゃ」

「あっそう?………はぁ!?」

「じゃあにゃー」

「あ、ちょ、待ちなさいよ、ルーニャ!?」

大声で叫ぶシルクを尻目に、私は社長室をあとにする。反対されるのは分かっていた。見ず知らずの少年を会社に引き入れるなんて。でももし、あの子に居場所がないのなら、私と同じ境遇を辿った者なら。

「放っておけるわけがないのにゃ」

廊下を歩きながら呟く。きっと、ルイージなら。あの時の彼なら。私と同じようにそうしてくれる。私がそうされたように。

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「おっきたっかにゃー!」

扉を荒々しく開けると、ルノという少年はビックリしながらこちらを見る。どうやら元気そうだ。

「大丈夫かにゃ?どこぞで倒れてたから担いで連れてきちゃったのにゃ」

たはは、と苦笑すると少し戸惑ったように頷く。さて、問題はこの子がどこから来たかだ。

「色々、聞いていいかにゃ?」

少し間を置いて、少年は頷いた。それを確認し、私は少年の隣へ座り質問を投げかける。

「君はどこから来たのにゃ?」

「…遠い、所。真っ暗、で、人も少なくて」

たどたどしく言葉を紡ぐ青年。恐らくあまり言葉を知らないのだろう、必死で知っている言葉を連ねているように見える。
遠い所で真っ暗、そんな所あっただろうか。

「じゃあ、なんで君は倒れてたのにゃ?」

「わからない、です。いきなり、暗い所、から、明るい所に、出た」

いきなり連れてこられたとでも言いたいのだろうか。これじゃ瞬間移動でもさせられたのかとしか思えない。いや、実際そうなんだろうが。

「明るい所、歩いてた。お腹、空いて…」

あそこの近くまで歩き続け、衰弱して倒れた。そういう事らしい。

「なるほどにゃー。それじゃ君には今行く宛はないってことでOKにゃ?」

コクリと、頷かれた。シルクが着いてきていたのかこちらをジッと見ている。判断はもう任せたということなのだろう。なら、答えは一つしかない。

「じゃあ、私と一緒にここに住むにゃ?」

私の問いかけにまたも少年はびっくりした顔でこちらを見る。一緒に住んでいいのというキラキラしたその瞳に、思わず私はキュンっと胸を踊らせてしまう。この子、可愛い。例えるなら、スピネル。

「遠慮はしなくてもいいにゃ、条件はあるけど」

条件という言葉に目をぱちくりとさせる彼を横目にシルクを呼ぶ。渋々私の隣まできたシルクを両肩に手を置きニッコリと微笑む。

「この子と、勝負してくれたらOKにゃ♪」

「…………は?」

シルクが振り向きポカンとする、少年も同じくポカンとした様子でこちらを見てみた。

「私なんか変な事言ったかにゃ?」

「めっちゃ言ってる。言っちゃってる」

シルクの驚いた声に首を傾げる。ここに住むということは会社に入ってもらうということだ。そりゃもう、試験は受けてもらわないといけないだろう。

「まぁとりあえず、さっさと行くのにゃー」

「え、ちょ、待ってってば、ルーニャ!?」

シルクの抗議の声を無視し、シルクとルノを連れて戦いの場へと赴いた。
これから、楽しくなりそうにゃ!

 


-続く-